トークイベント「不可視のカルチャー雑誌を編集する方法」に出演

1月31日(火)、銀座の「本屋 EDIT TOKYO」で行われるトークイベント「不可視のカルチャー雑誌を編集する方法」に出演いたします。オーガナイズは編集者の九龍ジョーさんで、「Jazz The New Chapter」シリーズの監修者でもある音楽評論家、柳樂光隆さんもご一緒です。

以下、九龍さんの告知文より。
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あらゆる方法やツールを駆使しながら、どこかお二人ともに感じるのは、それぞれが「見えないカルチャー雑誌」を編集されているのではないか、ということです。不肖ぼく自身、そういうところがあるので「雑誌」という言い方をしていますが(あと今回の企画のキーワードが「編集者」でもあるので)、大きくは「メディア」でも「風景」でもかまいません。

さらにこんなことを思います。

そもそも見えないのだから確信もできませんが、そういった不可視の雑誌を編集することはとても楽しい作業なのではないかと。

もちろん苦労も絶えないとは思いますが、心躍る瞬間はきっと多いはずで、その「心躍る瞬間」にこそ、エディット脳はフル回転するのではないか。

そういった方法はいかにして可能か、を念頭に置きながら、ざっくばらんにそれぞれが「今、面白い」「興味ある」ことについても話ができればと思います。

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案外異色の組み合わせだと思うし、僕自身、どんなトークイベントになるか見えないところもあるんですが、だからこそ非常に楽しみです!

チケット申し込みや詳細はこちらのリンクからどうぞ。http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01h2xkynfnuu.html

神の使者「神鬼」の化身が司る伝統行事――秋田県男鹿市北浦真山地区「真山のナマハゲ」

年明けから随分時間が経過してしまいましたが、昨年後半はバタバタのあまり、こちらのブログにもまったく書き込みすることができませんでした。今年は心機一転、もう少し積極的に書き込みをしていければと思っております(といいながら、すでに年明けから9日ほど経過しているわけですが…)。というわけで、本年もどうぞよろしくお願いいたします!

まず、大晦日から正月までは秋田にお邪魔しておりました。2012年に西馬音内盆踊りを取材して以来なので、実に4年ぶり。しかも初めての冬の秋田です。

今回の旅の目的のひとつが、男鹿半島でナマハゲを取材すること。ナマハゲというとどうしても観光客向けのものか、エンターテイメント的要素の強い創作芸能系のイメージが強かったのですが、本来は小正月の民間伝承行事。男鹿半島では集落ごとに異なるスタイルのナマハゲが継承されており、そのなかには「これもナマハゲなの?」という奇妙な面のものも多数あります。今回は「里山のカフェ ににぎ」店主の猿田さんにお世話になり、ナマハゲの発祥地のひとつとされる真山のものを体験することができました。


真山のナマハゲは角がなく、一般的な「ナマハゲ=鬼」のイメージとはまるで違います。実際、真山のナマハゲは神の使者「神鬼」の化身とされていて、集落の人々はそんなナマハゲを暖かく迎え入れ、ご馳走でもてなします。その光景からは、仏教的な鬼のイメージが一般的になる以前の、それこそ仏教伝来以前の信仰の形が透けて見えてくるようです。子供を驚かすだけがナマハゲの仕事ではないんですね。


また、真山は海と山の信仰が重なり合う男鹿半島の宗教世界の中心をなす霊山。昨年10月に訪れた大分の国東半島も独特の信仰が凝縮された地でしたが、男鹿半島の濃密な宗教世界との共通点を感じたりもしました。ナマハゲの背景に広がる男鹿半島のディープで豊かな世界に触れられただけでも訪れた甲斐があったな。男鹿半島、東京からはちょっと距離があるけど、苦労してでも行く価値あり。2日間の短い滞在期間でしたが、本当におもしろいところです。なお、こちらの取材記事は月刊「DISCOVER JAPAN」の祭り連載で取り上げる予定です。

「里山のカフェ ににぎ」のFBページはこちら。ため息が出るほど美しいところです。冬季は休業中とのことで、行かれる際はこちらで営業情報のチェックを。
https://www.facebook.com/ninigicafe/

2日目は男鹿半島から三種町へ。かの菅江真澄も訪れたという曹洞宗・松庵寺(創建は1532年)にお邪魔し、副住職の英心くんとご家族のみなさまにお世話になりました。

英心くんはコロリダスの打楽器奏者として活躍する一方、秋田に軸足を置いた仏教系レゲエ・バンド、英心&The Meditationaliesのリーダーとしても精力的に活動中。2015年に出た英心&The Meditationaliesの『からっぽ』はトンでもない傑作でして、以前からぜひ一度英心くんの歌の背景にあるものに触れてみたいと思っていました。



英心くんに教えてもらって初めて知ったのですが、秋田は1日の日照時間が日本でも3本の指に入るほど短い地。秋田のリアルな現状についてもいろいろと話を聞き、英心くんの歌の根っこにあるひんやりとした感覚がどこからやってきたのか、少し分かった気がしました。もちろん秋田で音楽活動を続けるのは本当に大変だと思うのですが、英心くんの活動によって勇気付けられたりヒントをもらう地方在住のミュージシャンは多いんじゃないでしょうか。僕自身、「視線を少し変えるだけで人生はこんなに豊かになる」ということを英心くんとご家族に教えていただいた気がいたします。

ちなみに、英心くんのお父様であり、松庵寺の住職である紫山さんは神奈川県鶴見区の総持寺にもいらっしゃったというお方。総持寺といえば、「一休さん」で踊りまくる独特の盆踊りカルチャーで知られており、僕も昨年総持寺で取材させていただきましたが(取材記事は月刊サイゾーの連載「マツリ・フューチャリズム」で書きました)、紫山さんの口から80年代の総持寺盆踊りに関する貴重な証言が突然飛びだしてビックリ。世界は狭いというか何というか。

英心&The Meditationalies『からっぽ』のトレイラーはこちらで。松庵時および三種町の風景もたっぷり。柴犬のマイケル(8歳)も出てきます。
https://www.youtube.com/watch?v=M3x70VUOjc8

猿田さんのお宅と英心くんのお宅では秋田の美味しいお料理とお酒もたっぷりいただき、両家のみなさまにはいくら感謝しても足りないほど。本当にありがとうございました!