社会に対して音楽は何ができるのか──映画「マージナル=ジャカルタ・パンク」

a4_omote_fix昨夜は渋谷のUPLINKで映画「マージナル=ジャカルタ・パンク」を観てきました。この映画はジャカルタのパンク・バンド、マージナルの活動を追ったドキュメンタリーで、監督は現地でジャカルタのパンク・シーンを追い続けている中西あゆみさん。今週末愛知県豊田市で行われる「橋の下世界音楽祭 SOUL BEAT ASIA 2014」に彼らも出るため、予習を兼ねて観てきました。

映画のなかでマージナルのメンバーは未来のない子供たちに音楽で生き抜く術を教え、仲間や同胞のために身を粉にして働きます。まずはその姿が感動的。困窮する社会に対して音楽は何ができるのか、文化は何ができるのか、そして人は何ができるのか。そういうことをマージナルのメンバーは教えてくれます。その真っすぐさは眩しいほどで、全身タトゥーでモヒカンという典型的パンク・ファッションに身を包んだ彼らの献身的な言動に、東日本大震災の直後から被災地でのボランティア活動に汗を流していた日本のパンクスたちの姿がダブる瞬間も。「橋の下世界音楽祭」を取り仕切っているTURTLE ISLANDが彼らに強いシンパシーを寄せるはずです。

また、音楽ドキュメンタリーとしてもこの映画は一級品で、公民館や空き地での凄まじいライブ・シーンに衝撃を受けない人はいないでしょう。10歳ぐらいの子供たちがパンク・ファッションでモッシュしているんですよ。まさにアジアのディーペスト・アンダーグラウンド・シーン!監督の中西さん、よくあんなシーン撮ったなあ。同じジャーナリストとして嫉妬すら覚えました。
細かいことを書くと、マージナル周辺のストリート・パンクス(子供も含む)の多くがウクレレを手にしている点もとても興味深かった。バスや電車など狭いスペースでもゲリラ・ライヴをできる(=どこでも金を稼ぐことができる)という理由からのようですが、南太平洋文化圏とインドネシアの繋がりに強い関心がある僕としては、ストリート・パンクスが手にするウクレレにも何らかのヒントがあるような気がしました。

マージナルのメンバーはただいま来日中。先述したように「橋の下世界音楽祭」にも出演します(僕も金曜と土曜に出演します!)。大文字の「国際文化交流」などとは別のところでパンクスたちは国境を越え、新しい世界を黙々と作っているわけで、「橋の下世界音楽祭」はそんな「もうひとつの世界」を直に体験できる貴重な機会になるはず。
また、映画のほうもまだ観るチャンスがあります。音楽に一度でも心揺さぶられた経験のある方であれば、「マージナル=ジャカルタ・パンク」、必見です。本当に素晴らしい映画でした。大推薦!

「マージナル=ジャカルタ・パンク」の詳細はこちらで。
http://www.uplink.co.jp/movie/2014/25940#bmb=1

そして、「橋の下世界音楽祭」の詳細はここ。
http://soulbeatasia.com/

こちらは「マージナル=ジャカルタ・パンク」のトレイラー。

オマケとして現在のインドネシア音楽のなかでもっとも気になるバンド、ホワイト・シューズ&ザ・カップルズ・カンパニーのライヴ映像を。これを観て僕は「沖縄じゃん!」と声を上げてしまったのでした。

なお、この「Tjangkurileung」という曲はジュールスというインドネシアのガレージ・バンドのカヴァー。こうしてどんどんアジア音楽奥の細道へ入り込んでいってしまうわけです。