鹿児島県南さつま市金峰町に伝わる異形の仮面の祭り「ヨッカブイ」

昨日までは約2週間ぶりに鹿児島へ。この夏は鹿児島を中心に祭り巡りをしているのですが、今回は南さつま市金峰町高橋の奇祭「ヨッカブイ」を取材してきました。

20150824-151449.jpgPhoto by KEIKO K. OISHI

シュロの樹皮でできた異形の仮面を被った大ガラッパ(河童)で知られるこの伝統行事、もともとは水難除けや集落の安全を願うもので、水神(ヒッチドン)を奉る祭りでもあります。大ガラッパが抱えるカマスという麻袋に入れられた子供たちは1年間水難事故に合わないとされるのですが、なにせ顔の見えないシュロの仮面はかなり不気味。まるで諸星大二郎さんの作品に出てきそうな感じです。そのため捕まえられてカマスに入れられた子供たちは全員大号泣、集落の方々によると「一週間は静かにしてる」とのこと(笑)。
また、集落の玉手神社ではマワシをつけた子供たち(小ガラッパ)によるガラッパ相撲が行われ、その後大ガラッパによる相撲甚句が歌い踊られます。この甚句がかなり不思議な響きを持つものだったのですが、テープ音源だったのがちょっと残念でした。

なお、玉手神社の境内には高橋貝塚という貝塚があり、周辺の集落では弥生時代から稲作が行われていたといいます。また、かつて高橋集落周辺は海だったそうで、水に対する潜在的な恐れがヒッチドンという水神信仰に繋がっているのかもしれません。高橋集落は修験道の霊山「金峯山」にも近く、歴史的にもとても興味深い場所。大ガラッパの不気味さに引き寄せられて金峰まで足を運んだ僕らでしたが、その背景に広がる南九州文化の奥深さにあらためて魅了されてしまいました。やはり南九州はおもしろい!(大石始)