異形の来訪神が暴れまくる沖縄・宮古島の奇祭「パーントゥ」

昨夜まで沖縄・宮古島に行っておりました。
メインの目的は「宮古版なまはげ」とも言える奇祭パーントゥの取材。来訪神をモチーフとする祭祀は世界各地にあり、僕らも取材に行った鹿児島のヨッカブイなどもその一種。そうした日本の来訪神信仰の祭祀のなかでもパーントゥは異形さではトップクラスと言えるのではないでしょうか。


ンマリガーと呼ばれる集落の聖地(「ガー」は井戸の意味)の泥を全身に塗り付け、その泥を人々や住居に付けることで悪霊を祓うというのがパーントゥの趣旨。ただし、ここ数年、泥をつけられた観光客からクレームが出たり、ある年は怒った観光客からパーントゥが暴行を受けるなんていうありえない事件もあって、開催日時は発表されないことになっています。僕らは縁合って2日に渡ってパーントゥにお邪魔し、2日目には御嶽のもとの宴会にも参加。泡盛を回し飲む宮古名物オトーリも初体験しました。僕以外はみんな60代以上の先輩方ばかり。彼らから「大石、飲め!」と言われれば当然拒否権はないわけで、マジで地獄を見ました…(笑)。

20151014-142819.jpg
しかし、臭い臭いと言われていたンマリガーの泥、やっぱりトンでもなく臭かったですね。昔に比べたらだいぶマシになったそうですが、今もまだ泥がついてるような気さえします。ただ、あの泥の臭さこそ文献をいくら読んでも分からないもの。実際に泥を全身に塗りたくられてこそ初めて分かることであって、その臭さを実感したとき「宮古まで来てよかった!」と思えたのでした。
また、たまたま開催していた民謡大会「なりやまあやぐ大会」でずっと見たかった友利の獅子舞いを偶然にも拝見できたほか、いくつものディープな御嶽をお邪魔して感無量。宮古の信仰と文化については考えたこともたくさんあるのですが、キリがないのでまた改めて。

20151014-143022.jpg
なお、今回の旅では宮古島を拠点に活動するバンド、BLACK WAXのメンバーに合うことも重要な目的でした。彼らには東京で何度も取材させていただいてますし、ライヴも何度も拝見していますが、やはりいつか宮古で話をしてみたい、という強い思いがありました。彼らの音の根っこにあるものが何なのか、ぜひ触れてみたかったのです。5日間に渡りメンバーのみんなや関係者のみなさんに大変世話になり、何度も酒を酌み交わし(笑)、とても貴重な時間を共に過ごさせていただきましたが、そのなかで感動したのは、BLACK WAXの活動スタンス。ドラムのミキオさんのホームスタジオにもお邪魔したのですが、サトウキビ畑のなかに佇むそのスタジオの雰囲気はほとんどジャマイカ。あらゆる流行が凄まじいスピードで移り変わっていく都市の文化ももちろん刺激的ですが、週2回、彼らが練習を重ねるそのホームスタジオには東京とはまったく別の空気が流れていました。なるほど、こんなスタジオで練習してきたからこそ、最新作『VIGOR』みたいなトンでもない傑作をモノにすることができたわけです。

20151014-142921.jpg
お世話になったBLACK WAXファミリーのみなさまに心から感謝。そして、ここまで僕らを誘ってくださった久保田麻琴さんと「スケッチ・オブ・ミャーク」に感謝。とても満たされた思いで東京に帰ってきました。また遊びにいきます!