ミュージック・レヴュー・サイト「Mikiki」で新連載「REAL Asian Music Report」が始まっております!

うっかりこちらでお知らせするのを忘れていましたが、タワーレコードが運営するミュージック・レヴュー・サイト「Mikiki」にて新連載「REAL Asian Music Report」がスタートしております!

日本のメディアではあまり伝えられることのないアジア各地のローカル・シーンの現状を紹介する、というのが連載のテーマ。
1回目に登場してくれたのはミャンマー・エレクトロの鬼才、ターソー。2回目では台北のライヴハウス〈台北月見ル君想フ〉店主・寺尾ブッタさんが、3回目ではアジア各地のアーティストのライヴ/上映イヴェントをオーガナイズするなど活発な活動を行う山本佳奈子さん(Offshore)にご登場いただいております。
こちらの連載では寺尾さんや山本さんのようなアジア各地で活動を行う日本人の方々も紹介しつつ、時にはワタクシのセレクトによるアジア最新インディー動画も紹介していければと考えています。

「REAL Asian Music Report」の記事一覧はこちらからどうぞ!
http://mikiki.tokyo.jp/search?keyword=REAL%20Asian%20Music%20Report

最後に僕がドハマリしているエイジアンR&Bの動画をいくつか貼っておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=DJM395kQ8Go
Illslick – ก่อนไป
こちらはタイのイルスリック。過去にはテヤン(BIG BANG)の“I need a girl”をリメイクしていたのでK-POP直系のR&Bアーティストかと思いきや、近作ではストーナーラップ的な酩酊感を打ち出していて、これがまたまろやかなタイ語の響きとやたら合うんです。

https://www.youtube.com/watch?v=jrzjgSsEb-s
The Bojam Project Refixes – Cool Ka Lang feat. Shane Anja
ここ数年高品質なサウンドプロダクションでフィリピンの音楽界を席巻しているアーバンミュージック・レーベル、フリップ・ミュージックの新曲。同レーベルの所属プロデューサー、ボジャムのリミックス・トラック。

https://www.youtube.com/watch?v=NZwGl78YRcc
Kimmese & JustaTee – Real Love
ちょっと前の曲ですが、ベトナムのキミーズとジャスタ・ティーのコラボ曲。モロにUS R&Bなスタイルですが、こういう曲調がアジア各国のポップチャートでひとつのスタンダードとなっているんですね。

……と挙げていけばキリがないんですが、続きは「Mikiki」の連載にて!

新潟県の豪雪地帯を見つめたドキュメンタリー映画「風の波紋」

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先日、ドキュメンタリー映画「風の波紋」の試写会にお邪魔いたしました。
監督を手がけたのは、佐藤真監督作品「阿賀に生きる」(92年)の撮影を手がけたほか、2009年にはケニアのストリート・チルドレンを描いた「チョコラ!」を監督した小林茂さん。どちらも大好きな作品だけに、今回も期待に胸を膨らませて試写会場に足を運びました。

この作品の舞台は、新潟県の長野県境に近い豪雪地帯「妻有(つまり)地方」。稲作を主な生業とする小規模な集落が点在するこの地方のうち、小林監督は十日町や松之山、津南、上越に住む人々に目を向けます。
この作品がユニークなのは、集落に代々住む人々だけでなく、都会からのIターン移住者にも目を向けているということ。登場人物のひとりである小暮茂夫さんは2002年に東京から中立山集落に移り住んだ方で、住居は茅葺き屋根の古民家。荒れ果てた棚田にみずから手を入れ、古来からの村落生活にどっぷりと浸かる毎日です。カメラはそんな小暮さんの生活を優しく見つめます。
また、そんなIターン移住者を支える代々の村民たちの優しい眼差しも印象的でした。やはり古老たちの言葉には重みがあり、彼らが出てくるだけで画面がぐっと引き締まります。先祖から代々受け継がれてきたであろう生活の知恵や美学のようなものが言葉の端々から伺えるのがいいですね。僕らもこうした古老たちに取材させていただく機会が多いため、「この人たちにお話を聞いてみたい!」という欲望がムクムクッと沸き上がってきました。

この映画の素晴らしさとは、過疎化する農村の厳しい現実を捉えながらも、決してそれだけではなく、Iターン移住者や地域おこし協力隊という外部からの動きとその交流をしっかりと描いたところにあると思います。
もちろん移住者のみなさんのなかにも日々の生活における苦悩や今後の生活に対する不安はあるはずですが、そこに本作の主眼はありません。新住民/旧住民が入り混じった日々の生活を通じ、今後の村落社会の可能性というものを優しく提示しようとしているところに本作の目的はあるように思えます。もしも「可能性」という言葉が楽観的すぎるのだとすれば、「もうひとつの生活のかたち」を提示しているというか。スクリーンの向こうから「こういう生き方もできるんですよ」という声が聞こえてくるような気がしました。

また、妻有地方の自然の移り変わりを見事に捉えた映像の美しさは溜め息がこぼれるほど。冬に降り積もる雪の白さ、春から初夏にかけての新緑の瑞々しさ、夏の水田の生命力みなぎる青さ。人工的な色彩は一切出てこないのに、とてもカラフルな作品を観たという充足感が残ります。

個人的にいえば、自分たちが現在やっていることと重なり合うものがあまりに多いため、「自分だったらどう撮るだろうか?/どう書くだろうか?」ということばかりを考えながら観ていました。終盤、どんど焼きのシーンがチラリとインサートされますが、数百年の間続いてきた集落の過去の気配がふわっと立ち上がってくるかのようなこのシーンにはやはりゾクッとさせられました。古来からの生活と現在の生活が混ざり合い、過去と現在と未来がひとつに溶け合ってしまったようなシーン。僕らがなぜ祭りや民俗芸能を追いかけているのか、少し分かったような気がしました。

なお、今回の試写会に誘ってくれたのは、長岡市在住の友人である伊部勝俊くんでした(小林茂監督も長岡在住のようですね)。彼からいただいたメールには「僕らの地元の映画を観てくれ」とでもいった気迫みたいなものが伝わってきて、心打たれるものがありました。制作および上映に関して地元のみなさんを含めた有志の方々がサポートしているようですが、そうしたバックアップ体制を作れること自体が素晴らしいことだと思います。
そして、見終わった後、妻有地方に足を運んでみたくなるのもこの映画の力ですね。ぜひ作品のなかに登場した古老たちに会ってみたい、そんな思いにも駆られた素晴らしい作品でした。

映画「風の波紋」は3月19日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー。
公式サイトでは応援団も募集しているとのこと。

映画「風の波紋」公式サイト
http://kazenohamon.com/

町中に「カッカッカー」という威勢のいい声が響き渡る、かみのやま温泉の奇習「カセ鳥」(山形県上山市)

昨日は山形県上山市で毎年行われている奇習「カセ鳥」を取材してきました、

「カセ鳥」とは「ケンダイ」とよばれる藁蓑で全身を覆った人々(今年は全部で34人)が町中を練り歩き、民宿の前などで「カッカッカーのカッカッカ」という歌と共に奇妙な舞を披露するという風変わりな行事。沿道の人たちはケンダイを被った人々に対して容赦なく冷水をぶっかけまくるのですが(!)、この奇習、実は寛永年間(1624〜1645年)から行われてるとされる歴史ある火伏せ行事。五穀豊穣を願うものでもありますね。

地元の図書館で郷土資料を片っ端からひっくり返してみたところ、明治以前は近隣で似たような行事が数多く行われていたことを知ってビックリ。カセ鳥も明治に入って一時伝統が途絶え、戦後になってから再開されたのですが、かつては「奇習」でもなんでもなく、そこいら中で行われていた行事だったわけですね。その背景や他の芸能・民俗信仰との共通性など考えさせられることも多く、とても意義のある取材となりました。

ちなみに、山形県上山市を舞台とした小川紳介監督作品「ニッポン国 古屋敷村」や「1000年刻みの日時計 牧野村物語」にメチャクチャ影響を受けているにも関わらず、山形に行ったのは今回が初めて。上山は蔵王への信仰登山の起点でもありますし、今回の旅で一気に目の前に広大な世界が開けてしまったような感覚があります。ここ数年、西にばかり意識が向かっていたのですが、東北方面への関心が久々に再燃しそうな気配!

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