世界文化遺産登録された沖ノ島の写真展。撮影は藤原新也さん。「印度放浪」や「メメント・モリ」などの作品が思い浮かぶ方も多いのでは。「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」ってテキストも記憶に残っている。
沖ノ島への一般人の上陸は厳しく制限されている。
しかし禁則の地とはいえ、写真に写っているのは、巨石や木や密林だ。そこには見たこともないような奇異はない。ただ自然がある。
目の前の手付かずの自然との対峙。そこにあるのは自然のままの岩。でも、その場で醸される特別な空気の影を捉えようと格闘する写真家の姿勢が、フレーミングや現像の工夫や画像の粒子から感じられて、そこには形としては写っていないけれど、ただならぬ気配を感じてしまう。何なんだろう、写ってはいないのに感じられる、明らかに普通ではない空気感。写真の不思議さ、呪術的な力を改めて感じた。
禁足の地が、必ずしも人間にとって御利益のある場所だとは限らないし、特別なパワーを人間に与えてくれるわけではない、と私は思う。
むしろ入るなと言われている場所には、怒らせると大変なことになる何かがいるのではないか。
自然は時に優しく、時には非常に厳しい姿を私たちに見せてくれる。単純に地震や津波や噴火などの自然災害に人間は勝てないということ。そこに畏怖の念を覚えることは、地球に生きる人間として根本的に重要なことだと思う。
そして禁足の地は日本各地に点在している。他にもまだまだ知られざる神のいる場所は存在する。
世界文化遺産登録された沖ノ島は、来年から一般人の全面立ち入り禁止が決まったそうで、心からホッとしている。元は女人禁制ということだし、私は一生行くことはないので、藤原さんの写真で見せていただいてありがたいなと思う。(ケイコ・K・オオイシ)