石畳の町に鳴り響く幻想的な胡弓の音色――おわら風の盆(富山県富山市八尾)

一昨日は富山・八尾の「おわら風の盆」を初体験。祭り自体は23時に終了しますが、それ以降のアフターアワーズ的町流しの雰囲気が最高だと聞き、深夜から早朝まで八尾の町を徘徊してきました。

まず、石畳の道の脇を水路が流れ、道の両側には延々灯篭が立ち並ぶ八尾の街並みの美しさに驚かされました。祭りの舞台としてまさにパーフェクト。あそこまで絵になる伝統行事もなかなかないのではないでしょうか。

浄瑠璃や長唄に精通した芸妓たちが発展に寄与しただけあり、披露される歌と踊りは実に優雅で完成されたもの。芸妓という「芸のプロフェッショナル」たちが磨き上げた部分もかなり多いように感じました。また、風の盆というと胡弓の音色が特徴的ですが、こちらは明治後期から大正にかけて越後の佐藤千代という瞽女が持ち込んだものだとか。そのように八尾の芸妓たちやさまざまな旅芸人たちの息遣いが現在も感じられるのが風の盆の魅力に繋がっているのでしょう。

早朝の町流しは期待以上に幻想的。最後の町流しでは青年会の列の最後尾にささっと老婆が加わり、円熟味のある踊りをさりげなく披露していました。親から子へ、子から孫へ。「おわら風の盆」もまた、八尾の町内で長い時間をかけて伝わってきたことが実感させられた感動的なシーンでした。(大石始)