昨夜は静岡県川根本町の「徳山の盆踊り」へ取材に行ってきました。
大井川沿いに走る大井川鉄道に揺られること1時間(途中でSLや機関車トーマスともスレ違った!)、ようやく辿り着いた徳山は山間の静かな集落でした。静岡の方が「川根は秘境」とおっしゃるのも分かるディープさ!
「徳山の盆踊り」の目玉は鹿の動きを模した「鹿ん舞」という踊り。3匹の牡鹿と牝鹿を先頭に、それを追うひょっとこからなる一群がユーモラスな動きを見せてくれます。鹿系の芸能というと岩手~宮城(および宇和島)の鹿舞を思い出しますが、あちらが勇壮な佇まいだとすると、徳山の鹿ん舞は中に入っているのが中学生の男の子たちということもあってかなり素朴です。ただ、ケイコ・K・オオイシさんが夜の浅間神社の境内で3匹の牡鹿と牝鹿を並べてポートレイトを撮影したのですが、写った写真には大井川の秘境の芸能ならではの奥深さと得体の知れない迫力が……やはり現地で見ないと分からないこともありますね(貼り付けた写真とは別のものです)。
Photo by KEIKO K. OISHI
「徳山の盆踊り」はその「鹿ん舞」に加え、かなり古い歌舞伎踊りの形式を残す「ヒーヤイ踊り」(現在は中学生の女子が踊っていますが、かつては青年男子が女装して踊ったそう)と、年配の方々を中心とする「狂言」が行われますが、こちらも振りや歌の文言を聞くだけでもかなり古風。虫の鳴き声しかしない静かな山間の集落で踊られる演舞を見つめながら、近世初期の芸能と祭祀と信仰の関係性に思いを馳せたお盆の夜でした。(大石始)