日本顔負けの熱気に溢れる「マレーシア・クアラルンプールの盆踊り」

昨夜までマレーシアのクアラルンプールに行ってきました。
現在関わっている某プロジェクトの視察と打ち合わせも兼ねたものだったのですが、祭りジャーナリストとしてのメインは、シャー・アラム駅近くの巨大スタジアムを舞台に行われる巨大盆踊り。クアラルンプール日本人会が主催となって70年代半ばから続けられているこの盆踊り、1日で実に3万人ものを人々が訪れるというビッグ・フェス。しかも参加者のほとんどがマレーシア人!

マレーシアでは他のアジア諸国同様、80年代より日本のアニメやマンガ、ドラマが受け入れられ、現在まで高い人気を誇っています。加えてマハティール(元)大統領が進めた東方政策により、日本との間で盛んな経済交流・文化交流が行われてきました。そのようにかねてから友好関係を結んできた両国だけに日本人会主催の盆踊りぐらい行われていても不思議ではないし、その手の国際交流イベントは日本でもよくあるものですが、会場に足を踏み入れてビックリ。予想を遥かに上回る規模と熱気!「誰かにやらされてる」国際交流イベントとは全然違う!

踊られる演目は「東京音頭」「大東京音頭」「花笠音頭」など。踊りの輪に入って撮影をしていたら、その熱気に圧倒されてしまいました。また、トゥドゥン(マレーのヒジャブ)に浴衣を合わせたお洒落レベルの高いコーディネイトのマレー・ギャルもたくさんいましたが、彼女たちの浴衣の着こなしも実にキマっていて、普段から日本文化に愛着と関心を持っていることが伝わってきました。「親日」とかのレヴェルじゃないんですよ、本当に。

とはいえ、僕が書きたいのは、昨今世に溢れている「日本の文化は海外でこんなに愛されているんだ!」という日本礼賛記事ではありません。
クアラルンプール盆踊りで一番感銘を受けたのは、盆踊りという「日本文化」の凄さというよりも、異国の文化に対するマレーシアの人々の懐の深さ。これまでのマレー半島の歴史とマレーシアという国家の成り立ちを考えてみると、その懐の深さは10年20年で育まれたものではないような気もします。
また、世界各地で見られる「一緒に踊る」というカルチャーの強みと魅力、奥深さも再認識させられました。こういうものをただの「モンドな盆踊り」として捉えるべきじゃないし、そんな単純なものではないと強く思います。

そんなわけで考えさせられることはあまりに多く、いまだ思考が整理できていない状態ではありますが、クアラルンプール盆踊りをきっかけに僕らの「日本文化」探求もどうやら次のステップへ進みつつあるようです。

なお、貼り付けた動画は僕がiPhoneで撮影したもの。もちろん、ちゃんとしたビデオで撮影したものもあります。盆踊り後半のより熱気を増した踊りの輪の映像は、今後トークイベントなどでご紹介していきます。また、レポートとケイコ・K・オオイシさんによる写真は「ソトコト」誌で掲載させていただく予定です。

まるでブラジルのカーニバル?鹿児島県日置市吹上町の「伊作太鼓踊り」

先週木曜日からは約4日ぶりに鹿児島へ。今回は日置市吹上町で伝えられている伊作太鼓踊りを取材してきました。薩摩半島ではとてもユニークな太鼓踊りが各地で継承されているのですが、装束の奇抜さではこの伊作太鼓踊りがダントツ。そのため以前から一度ナマで体験せねばと考えていたのですが、このたびようやく初体験することができました。

20150901-142250.jpgPhoto by KEIKO K. OISHI

8月28日(金)の朝イチで奉納が行われるのは、集落の奥まった地に鎮座する南方神社の境内。鬱蒼と茂った木々に囲まれながら奉納される太鼓踊りは想像以上の大迫力です。相撲の行事が持つ軍配を模した矢旗がひときわ目を引きますが、背中には薩摩鶏の羽で作ったホロが飾り付けられていて、その姿はまるでグラムロッカーのよう。その中心で鉦を叩くのは、花籠を被った中打ちたち。女性に扮した少年~青年たちのそのステップは確かに念仏踊り的で、祖霊供養を目的とする念仏踊りとかねてからの虫送りの風習などが複雑に入り混じった薩摩の太鼓踊りの魅力を再認識しました。
そして何よりも強い印象を残したのが、強烈なグルーヴとダイナミックなステップ!ほとんどブラジルのカーニバルのようで、観ているだけで胸の奧から熱いものがこみ上げてくるのが分かります。この感覚、阿波踊りを初めてナマで体験し、大感動した瞬間に覚えたものとも似ているかも。自分が住む列島にこれほどまでにカラフルで鮮やかな芸能が息づいているなんて、ホント衝撃です。久々のカルチャーショック!
そんなわけで、あまりに素晴らしい伊作太鼓踊りを体験したことによって、自分のなかの「日本像」はまたもや大きく揺らいでしまいました。そして、僕らは生活のなかで固定化されがちなこの列島に対するイメージを自分たち自身で揺さぶるため、こうして各地の祭りを渡り歩いているのかもしれません。

伊作太鼓踊りの取材後は、阿久根市のとある漁村に住む友人夫婦、ハマちゃんとショウコちゃんのお宅でお世話になりました。彼らが住むのはカマドのある素敵な古民家。虫の鳴き声しかしない静かな夜、久々にぐっすりと眠ることができました。阿久根の海の幸もたっぷりいただき、大感謝。2人の優しさが身に沁みました。ハマちゃん、ショウコちゃん、お世話になりました!(大石始)

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東京最高のブロックパーティー「錦糸町河内音頭大盆踊り」

8月26日と27日の2日間、今年も東京の夏の風物詩「錦糸町河内音頭大盆踊り」が開催されました。今年は初日だけの参加となりましたが、僕ももちろん錦糸町へ!

20150901-135119.jpgPhoto by HAJIME OISHI

会場内のレイアウトを変更し、ダンスフロアを拡大したことによって舞台上の音頭取りのみなさまとダンサーのみなさまの距離がグッと近くなり、例年以上に会場内のグルーヴも上昇。2011年以来の司家征嗣さんのステージがまた涙モノの素晴らしさで、しみじみと河内音頭の魅力を噛み締めた夜でした。主催者・関係者のみなさま、今年もおつかれさまでした!

なお、錦糸町河内音頭大盆踊りに関しては、2012年春に刊行された「アルテスVol.2 2012 SPRING」(アルテス・パブリッシング)に掲載された僕の連載「まつりの島」でたっぷり触れています。タイトルは「下町に鳴り続ける不死のリズム──錦糸町河内音頭大盆踊り」。ご興味ある方はぜひ読んでみてください!(大石始)

「アルテスVol.2 2012 SPRING」の詳細はこちら。
http://magazine.artespublishing.com/backnumber/『アルテス-vol-02%E3%80%802012-spring』br特集%E3%80%88アップルと音楽〉

鹿児島県南さつま市金峰町に伝わる異形の仮面の祭り「ヨッカブイ」

昨日までは約2週間ぶりに鹿児島へ。この夏は鹿児島を中心に祭り巡りをしているのですが、今回は南さつま市金峰町高橋の奇祭「ヨッカブイ」を取材してきました。

20150824-151449.jpgPhoto by KEIKO K. OISHI

シュロの樹皮でできた異形の仮面を被った大ガラッパ(河童)で知られるこの伝統行事、もともとは水難除けや集落の安全を願うもので、水神(ヒッチドン)を奉る祭りでもあります。大ガラッパが抱えるカマスという麻袋に入れられた子供たちは1年間水難事故に合わないとされるのですが、なにせ顔の見えないシュロの仮面はかなり不気味。まるで諸星大二郎さんの作品に出てきそうな感じです。そのため捕まえられてカマスに入れられた子供たちは全員大号泣、集落の方々によると「一週間は静かにしてる」とのこと(笑)。
また、集落の玉手神社ではマワシをつけた子供たち(小ガラッパ)によるガラッパ相撲が行われ、その後大ガラッパによる相撲甚句が歌い踊られます。この甚句がかなり不思議な響きを持つものだったのですが、テープ音源だったのがちょっと残念でした。

なお、玉手神社の境内には高橋貝塚という貝塚があり、周辺の集落では弥生時代から稲作が行われていたといいます。また、かつて高橋集落周辺は海だったそうで、水に対する潜在的な恐れがヒッチドンという水神信仰に繋がっているのかもしれません。高橋集落は修験道の霊山「金峯山」にも近く、歴史的にもとても興味深い場所。大ガラッパの不気味さに引き寄せられて金峰まで足を運んだ僕らでしたが、その背景に広がる南九州文化の奥深さにあらためて魅了されてしまいました。やはり南九州はおもしろい!(大石始)

静岡県川根本町の「徳山の盆踊り」へ

昨夜は静岡県川根本町の「徳山の盆踊り」へ取材に行ってきました。
大井川沿いに走る大井川鉄道に揺られること1時間(途中でSLや機関車トーマスともスレ違った!)、ようやく辿り着いた徳山は山間の静かな集落でした。静岡の方が「川根は秘境」とおっしゃるのも分かるディープさ!

「徳山の盆踊り」の目玉は鹿の動きを模した「鹿ん舞」という踊り。3匹の牡鹿と牝鹿を先頭に、それを追うひょっとこからなる一群がユーモラスな動きを見せてくれます。鹿系の芸能というと岩手~宮城(および宇和島)の鹿舞を思い出しますが、あちらが勇壮な佇まいだとすると、徳山の鹿ん舞は中に入っているのが中学生の男の子たちということもあってかなり素朴です。ただ、ケイコ・K・オオイシさんが夜の浅間神社の境内で3匹の牡鹿と牝鹿を並べてポートレイトを撮影したのですが、写った写真には大井川の秘境の芸能ならではの奥深さと得体の知れない迫力が……やはり現地で見ないと分からないこともありますね(貼り付けた写真とは別のものです)。
20150816-203309.jpgPhoto by KEIKO K. OISHI

「徳山の盆踊り」はその「鹿ん舞」に加え、かなり古い歌舞伎踊りの形式を残す「ヒーヤイ踊り」(現在は中学生の女子が踊っていますが、かつては青年男子が女装して踊ったそう)と、年配の方々を中心とする「狂言」が行われますが、こちらも振りや歌の文言を聞くだけでもかなり古風。虫の鳴き声しかしない静かな山間の集落で踊られる演舞を見つめながら、近世初期の芸能と祭祀と信仰の関係性に思いを馳せたお盆の夜でした。(大石始)

鹿児島・いちき串木野市の「市来の七夕踊り」

土曜から先ほどまで鹿児島に行ってきました。
目的はいちき串木野市大里地区で行われる「市来の七夕踊り」。この祭りの目玉は「つくいもん」と呼ばれる虎・牛・鹿・鶴をモチーフとした大きな張り子。なかでもほとんどネコにしか見えない虎の動画をYoutubeで見て一目惚れした僕は、念願叶って市来を訪れることができたのでした。

ほとんどジブリの世界から抜け出してきたような「つくいもん」のチャーミングさ(でも、時に凶暴)、彼らに続く行列に「琉球人」をモチーフにしたキャラクターが存在するおもしろさ、そして薩摩半島特有のカラフルな装束に身を包んだ太鼓踊り。そうした一行が青々とした水田のなかを練り歩いていく光景は、ほとんど中世の神話的世界から飛び出してきたかのよう。そして、その水田の横には一見しただけでは道祖神かと思った「田の神」の石像が。薩摩の農耕社会と祭祀の関係性や、虎が実は朝鮮半島の虎をモチーフとしていることなど考えるべきことはあまりに多く、とても貴重な旅になりました。やはり南九州文化圏はめちゃくちゃおもしろいです!(大石始)

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名古屋〜大阪に行ってきました

この週末は名古屋~大阪遠征でした。

名古屋では昼間から各地の酒場を巡り、名古屋の味を心ゆくまで堪能。最終的に旧友が今池でやってる中華料理店「ピカイチ」に着地し、90年代の渋谷・宇田川町のバカ話で酒を呑むという不思議な状態に。今度はぜひ大須演芸場が復活したタイミングでお邪魔して、尾張の芸をゆっくり味わいたいものです。

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大阪では西淀川区野里の野里住吉神社祭礼にお邪魔し、念願だっただんじり囃子を初体験。まだ宵宮の早い時間ということもあって盛り上がりはまだまだでしたが、だんじり囃子の独特のグルーヴを体験できて大満足。その後は千日前に移動し、今年でオープンから60年目を迎える巨大キャバレー「味園ユニバース」へ。レイザーとミラーボールきらめくなか登場したのは何と河内家菊水丸さん!てっきり20分ほど歌って終了、かと思いきや、アンコール含め約1時間を熱演。かつて河内音頭が朝までやっていた時代、朝方の定番だったというバレ歌的なネタまで披露してくれました。終演後ご挨拶にいくと、まさか僕が大阪にいると思わずびっくりされていましたけど、そりゃそうだよな。

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そんなわけで、名古屋~大阪でお世話になったみなさんに心から感謝!また乾杯しましょう!!(大石始)

郡上おどりin青山

もう1ヶ月近く経ってしまいましたが、「郡上おどりin青山」に行ってきました。おしゃれな街青山に日本三大盆踊りのうちのひとつ岐阜県郡上おどりがまるごとやってくる、夏の到来を告げるおどりです。初日は大雨、踊り手の中には浴衣にレインコートをはおって踊られた方もいたそうです(私も踊りたかった!)。
本場岐阜県の郡上おどりは7月中旬から9月上旬にかけて33夜にわたって踊られますが、クライマックスの徹夜おどりは8月13,14,15,16日の4日間です。
郡上おどりには浴衣と下駄はマストアイテムです!おどりの下駄を鳴らす音が古い街並に響き渡りおどりの調子を高め、風情があっていいものですし、踊り手はカランと鳴らすのがだんだん気持ちよくなっていくのです(笑)。郡上は男性の踊り手が多い印象がある盆踊りですが、下駄を鳴らしたりこぶしをグッと前に突き出したりする力強い振り付けは男性の踊り手がサマになってとても素敵です。下駄は会場でも売っていますよ〜。
(ケイコ・K・オオイシ)
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「女性自身」おすすめ盆踊り 掲載!

キビシー暑さでぐったりしちゃうところですが、そうもいってはいられません。
今年もお祭りシーズンがやってきました!
盆踊りも日本全国各地で開催される時期ですね。
そんな時節の7月28日発売、光文社週刊誌「女性自身」にて「踊りに行きたい!全国の盆踊り」特集ページでのおすすめ盆踊りコメントを掲載していただきました!

※写真は掲載誌とは何の関係もありません。吉祥寺南口ふれあい夏祭りにて。
ケイコ・K・オオイシ

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「墨田祭りセッション」盛況御礼!

7月12日に開催された
月刊「ラティーナ」&大石始プレゼンツ「墨田祭りセッション」
〜東京天水連 vs mocidade samba system vsタブラクワイエサ。
当日の様子をレポートします。

前半は大石始による祭り映像のワークショップ。

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司会は山口屋左七(錦糸町河内音頭大盆踊り司会:写真左)。花田勝暁(「ラティーナ」編集長:写真右)も登場。

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こちらは奄美の祭り「ショチョガマ」の映像ですが、クライマックスの瞬間に客席から思わず「おおーーー!!」と歓声があがりました!

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ついつい見入ってしまう祭り映像の上映。

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ブラジルのバテリア(打楽器)ユニット、 mocidade samba system。カッコいい!

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日本初のエジプト太鼓のアンサンブルバンド、タブラクワイエサが何やら妖しいムードで登場!

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会場は大盛り上がり♪

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そして東京天水連(東京高円寺阿波おどり連協会所属)!

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各楽器の解説もありました。

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最後はmocidade samba system、タブラクワイエサ、東京天水連がセッション!
なんでしょう、この迫力とカオス感から生まれてくる感動は!最高です!

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会場が一体となって祭りの渦へ!

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なかなか一堂に会することのない各国の打楽器アンサンブルの異種格闘技的な趣もあるイベントでした。
出演者・関係者の皆様方、ご来場いただいた皆様方、ありがとうございました!
おかげさまですばらしい祭りができました!